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『川に続く秋色の小径』 水彩 カナダの旅 スティールヘッド編 8 [水彩画]

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『川に続く秋色の小径』 水彩 F3 カナダの旅 スティールヘッド編 8

キスピオックに来て強く感じたのは、鼻が痛くなるほどの乾燥、宇宙が近いと思わせるような空、落葉樹の燃え上がるような黄葉と紅葉。そして釣りというよりは狩に近いスティールヘッディング。




スティールヘッドの釣り5日目(最終日)

今日もトム君のガイド、小さな沢の合流点から釣り開始。いかにも良さそうなポイントなので藤野さんに譲り、僕は一つ下流の瀬尻に向かった。今日でスティールヘッドの釣りが終わる。最初の2日間はどうなる事かと心配したが、既に5本のスティールヘッドを釣り上げた。ボウズで帰国が当たり前のようなスティールヘッド・フィッシング・ツアーとしては奇跡のような結果になったナ・・・
そんな事を考えていたら モソッ とアタリが来た!一呼吸おいて思い切りアワセを入れると、小型のスティールヘッドが朝日の中で水しぶきを上げた。8ポンドほど、きっと川に戻って来るのは初めてなんだろうな・・・針を外していると上流から藤野さんの声がする。戻ってみると、藤野さんも8ポンドほどのスティールヘッドをランディングしたところだった。

ボートで川を下って行くと、水中にスティールヘッドの魚影をよく見かけるようになった、一昨日までは無かった光景だ。やはり昨日から新しい群れが遡上し始めたのだろう、今日も期待できる。
長いトロ場に差し掛かると、ライズが見えた。トム君はスティーヘッドのライズだと言う。もう一匹は是非ドライフライで仕留めたいと言う藤野さんにポイントを譲り、僕らは少し高いところから見物する事にした。
確かに80cmほどの魚影が定期的にライズを繰り返していた。
「もう少し右!」
「そうそう、今サカナの上を通過中」
「わっ!動いた!」
などと藤野さんからは見えない動きを実況中継する。何回か流すうちにサカナは警戒してライズを止めてしまった。トム君が以前ああいった感じの神経質なスティーヘッドを喰わせた事があると言うので、今度はトム君にトライしてもらう。
さてお手並み拝見。いやはやお見事、距離も角度も一投目からピッタリ、毛鉤は今サカナの鼻ヅラをかすめようとしている・・・
喰うか?・・・喰わない。
毛鉤を変えてもう一度。
今度も魚影の鼻ヅラをかすめる・・・「ワッ 揺れた!」・・・出るか?・・・う~ん 出ない。
神経質な魚影は危険を察知したのか、スッーと淵の奥に消えて行った。
「残念だったね」
「申し訳ない、僕はガイドとして恥ずかしい」
「いやいや、あれは仕方が無い、散々藤野さんがやった後だもの、逃げて当然だよ」

僕も、もちろんドライフライの釣りが嫌いな訳ではない。ただ、海から遡上してきたばかりのスティールヘッドがどれだけ水面の昆虫に興味があるのか?甚だ疑問なのだ。川に居た頃の捕食スタイルを呼び覚ますには、ある程度の期間が必要なのではあるまいか?また、水温がどんどん低下して行くこの時期は水面を流下する昆虫はどんどん減少して行くだろう、そんな環境でもマスは水面に興味があるのだろうか?まあ、この推理は間違っているとしても、遡上の道中、おびただしい数のウエットフライやルアー、釣り人の影を見てきている筈であるから、かなり警戒心の強いサカナになっていることは十分あり得る・・・等、いろいろ考えてしまうのだ。これだけややこしい推理をガイドにぶつけてみる程の英語力は残念ながら無い。釣りも、英語も・・・モア・プラクティスである。

40年以上長良川の漁をやっている知人が「未だに鮎のことはようわからん」と口癖のように言っていた。今考えている事も、これと同じ様な自然を相手にする者の勝手な理由付けや推理であって、明確な答えを知る者などこの世に居ないのかもしれない。


とうとう最後のポイントになった。

瀬尻にテーブル大の沈み石が見える。狙うならあそこだな、静かにウェーディングして行きパープルマラブーを流しながら、核心部に近づいていく。
モソ・・・
かすかに毛鉤を触った感触があったが、相手はくわえなかった。
・・・此処は橋が見えるポイントだからきっとサカナがスレているのだ。
その場で僕はゆっくり煙草を一本吸い、0番のパープルマラブーを外し、2番のグリーンバットスカンクに結び変えた。
この一投が最後の勝負や!

さっきアタリのあったラインにきっちり乗せて毛鉤を送り込む・・・
モソッ・・・
一呼吸間を置いて思い切り合わせを入れる。
ギューン!
針掛かりした相手は一気に20mほど横走りし、ジャンプした!
う~ん いいサイズだ!
ラインがキューンと音を立てながら水を切る。
ジリジリと間を詰めながら岸に寄せる。
浅瀬まで寄せてくると相手は観念した。
85cm18ポンド、7匹目のスティールヘッドは22ポンドの次に手強い相手だった。

針を外し両手で支えてやる。
息を吹き返したスティールヘッドは静かに流芯に戻って行った。

岸で一部始終を見ていた初老の釣り人が「ナイスファイト」と言いながら右手を差し出した、僕は「ありがとう」と言いながら握手に応えた。

080922-s-500-1988910.jpg1988年9月10日

              カナダの旅スティールヘッド編 
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