高熱隧道 [最近読んだ本]
黒部第三発電所隧道(トンネル)貫通工事 昭和11年着工、15年完工。
掘削する岩盤はダイナマイト装填限界40℃を徐々に越え、遂には166℃に達する高熱地帯。
頻発する資材運搬中の転落事故やダイナマイト暴発事故、更に越冬工事中、宿舎が泡雪崩に遭うという不運、完工までに犠牲者は300名を越えた。現代であれば初期段階で中止であろうが、当時は軍需工業の電力確保という国命のもとこの工事は強行された。
工事過程についてはほとんどノンフィクションとされている。工事を進めるにつれ次々と起こる難関を克服して行く技師や人夫の努力、心の葛藤、人間模様の描写など文中にぐいぐい引き込まれる。
国策という大義名文は別として、一度始めたら途中で誤りを見つけたとしても最後までやり遂げてしまう人間の本性のようなものも垣間見える。
原子力発電事故の影響を目の当たりにした今、世界でも有数の火山国である日本でもっと地熱を利用しない手はないのでは?と思う。
また、水力や地熱発電では本書のようなリスクやコスト、風力発電では低周波騒音の問題があったり各々発電方法に伴うリスクとコスト、後世に残すべきものか?残すべきでないものか?様々な事柄を踏まえて代替エネルギーを選択して行かなければならないと思う。
2011-05-10 09:35